PQシートとトラックタイム

PQシートの例

これまで寄せられた質問数のナンバーワンはこれである。

リンクは、とあるアルバムの実例であるが、マスタリングスタジオでマスタリングを完成させた場合、もしくはマスタリングエンジニアにマスタリングを依頼した場合、マスターそのものと、TOCを示したこのようなシートが支給される。

まずPQシートという呼び名は、おそらく放送などで用いられているQUEシートが転じたもの。PQというのはCDのフォーマットのうちPエリアとQエリアに書き込まれるデータの俗称であるが、これらを打ち込む作業を昔はPQ打ちと呼び、この習慣に習いこの様な呼び名になったのかもしれないが、私はその所以を知らない。タイムシートと呼称することも可能であろう。

呼び名なさておき、このシートの内容をある程度理解しなければならない。
最も重要なのがトラックタイムで、これを示す値が「レングス」であることは想像できよう。この値はトラックタイムとしてグラフィックに表示するだけでなく、ISRCコードの申請、JASRACの申請などにも用いる。
秒数以下に2桁の「フレーム」が表示されていることに違和感を感じるかもしれないが、CDは「1秒が75フレーム」というフレームでシーケンスされている。つまりこのフレームをどの様に扱うかということだが、実はガイドラインは存在しそうで存在しない。よってレーベルの方針で決定すれば良いが、考え方として
1. 切り捨て
2. 畳み込む
のどちらかが考えられるだろう。ちなみに75フレームは10進法ではないので四捨五入は当てはまらない。考え方を変えると、例えば映像(いくつか存在するが例えばYouTubeなどは)30フレームという単位で動作している。75フレームだとある程度細かいので、はっきりしないが、この様に映像に置き換えた場合、10秒と1フレームを11秒としたいか。といった場合、それは違和感を感じるはずである。
また、CDプレーヤーに示される値に揺れがあることはあまり知られていないが、そもそも業務機はフレームが表示されたりもしたし、実際フレーム単位まで記したインレイカードがCD黎明期は存在した(旧コロンビアだったか)。
よって、基本的には「1. 切り捨て」が推奨されるが、CDには「ギャップ」と呼ばれる「隙間」が規格として設けられているので、この辺をどの様に読み解き、どの様に表示するか、トータルプレイングタイム、配信との整合、これらは全てそのレーベルの判断に委ねられる。